外航貨物海上保険
保険の概要
国際間輸送される貨物を対象に、海上・航空・陸上運送中のさまざまなリスクから生じる損害をカバーするオーダーメイドタイプの保険です。
保険期間
インコタームズでは、貨物の危険負担が、どこで売主から買主に移転するかが決められています。外航貨物海上保険の保険期間は、売主と買主のどちらが保険手配するか、および、貨物の危険負担がどこで移転するかによって定まります。例えば、FOB条件で輸入する場合は、仕出地において貨物が輸出本船に積込まれたときに危険負担が移転しますので、買主が手配する外航貨物海上の保険期間もそのときから始まります。
一方、売主が外航貨物海上保険を手配すると定めているCIF条件で輸出する場合は、危険負担の移転時期はFOB条件と同じですが、売主は自ら危険負担する積込み前の区間に加え、買主が危険負担する積込み後の区間も合わせた全輸送区間を通じて保険を手配することとなります。
すべての輸送区間を通じて保険を手配する場合は、「仕出地における倉庫または保管場所において、輸送の開始のために輸送車両または他の輸送用具に保険の目的物を直ちに積込む目的で、保険の目的物が初めて動かされた時」から、通常の輸送過程を経て、「この保険契約で指定された仕向地の最終の倉庫または保管場所において、輸送車両またはその他の輸送用具からの荷卸しが完了した時」までが保険期間となります。
これらを図示すると以下のようになります。
ただし、次のような場合には、輸送の途中であっても保険は終了します。
- ・外航本船から荷卸しされて60日経過したとき。(航空機輸送の場合は、荷卸し後30日経過したとき。)
- ・通常の輸送過程にあたらない保管または仕分け等のために倉庫において荷卸しされたとき。
Risk Attachment Clause
買主である輸入者が保険手配をする場合等は、Risk Attachment Clauseを適用し、危険負担が売主から買主に移転した時を保険始期とします。
たとえばFOBまたはCFR条件での輸入については、貨物が外航本船に積み込まれたときとなります。
FOBおよびCFR輸入の場合の保険期間
CIF輸出の場合の保険期間
※これらは一般的な保険期間の設定例を図示したものであり、ご契約内容により異なる場合があります。詳しくは当社にご相談ください。
貿易取引と外航貨物海上保険
貿易取引条件
遠隔地間の取引である貿易売買においては、「商品の引渡し場所はどこか」「売主と買主のどちらが船舶を手配するか」「売主と買主のどちらが外航貨物海上保険を手配するか」をあらかじめ売買当事者間で十分に確認しておく必要があり、これらを折り込んだ標準的な貿易取引条件に関するルールが定められています。貿易取引条件に関するルールとしては最も広く使用されている国際商業会議所のインコタームズ(INCOTERMS)があり、下表のような標準的取引条件が決められています。
売買または買主は、貿易取引条件にしたがって外航貨物海上保険を手配する必要があります。
貿易取引条件 | 売主 | 買主 |
---|---|---|
FOB条件 | 船積み原価(COST)で売る | 本船と保険の手配を行う |
CFR条件 | 本船を手配し、船積み原価(COST)+運賃(FREIGHT)で売る | 保険の手配を行う |
CIF条件 | 本船、保険を手配し、船積み原価(COST)+運賃(FREIGHT)+保険料(INSURANCE)で売る | 本船と保険の手配は行わない |
信用状における保険条件の指定
貿易取引における代金の決済を円滑に行う方法として、買主の取引銀行が信用状(L/C)を発行する信用状取引があります。売買契約がCIF条件などの場合、信用状の中で船積み書類の一つとして、「保険証券」の提出を求められ、保険条件も信用状で指定されています。売主は信用状の修正(アメンド)を行わない限り、信用状の指示どおり外航貨物海上保険を手配する必要があります。
保険条件
保険会社が保険金の支払い対象とする危険、保険金が支払われる範囲および保険期間などは、あらかじめ約款により取り決められます。当社では英国保険市場にて作成された「協会貨物約款(Institute Cargo Clauses:ICC)」を使用しており、その基本条件は次の通りです。
(1)海上危険に関する基本条件
当社が標準的な約款として使用する2009年制定協会貨物約款(ICC(2009))には、ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)の3種類の基本条件があります。それぞれの基本条件で保険金をお支払いする主な場合は下表のとおりです。また、個々の貨物の性質や輸送実態などに合わせて、ICCに各種特約をセットすることがあります。
2009年制定協会貨物約款の基本条件と保険金をお支払いする主な場合
○ お支払いの対象となります。
× お支払いの対象となりません。(ただし、該当の危険を補償する特約をセットした場合には、お支払いの対象となります。)
危険の具体例 | 基本条件 | ||
---|---|---|---|
ICC(A) | ICC(B) | ICC(C) | |
火災・爆発 | ○ | ○ | ○ |
船舶または艀の沈没・座礁 | ○ | ○ | ○ |
陸上輸送用具の転覆・脱線 | ○ | ○ | ○ |
輸送用具の衝突 | ○ | ○ | ○ |
本船または艀への積込・荷卸中の落下による梱包1個毎の全損 | ○ | ○ | ×(注1) |
海・湖・河川の水の輸送用具・保管場所への浸入 | ○ | ○ | ×(注2) |
地震・噴火・雷 | ○ | ○ | × |
雨・雪等による濡れ | ○ | × | × |
破損・まがり・へこみ、擦損・かぎ損 | ○ | × | × |
盗難・抜荷・不着 | ○ | × | × |
外的な要因をともなう漏出・不足 | ○ | × | × |
共同海損・救助料、投荷 | ○ | ○ | ○ |
波ざらい | ○ | ○ | ×(注2) |
- (注1)当社では自動セットする特約によりお支払いの対象となります。
- (注2)当社では自動セットする特約により、保険の目的物が全損となった場合お支払いの対象となります。
協会貨物約款(Institute Cargo Clauses:ICC) |
---|
英国保険市場で作成されたICCは、国際市場においても実質的な標準約款として認められており、現在では1963年に作成されたICC(1963)、1982年に作成されたICC(1982)および2009年に作成されたICC(2009)が使用されています。当社では近年の国際間取引や物流の実態を踏まえたICC(2009)を基本約款として採用しております。 ※貿易取引や信用状で指定された場合など、必要に応じてICC(1963)、ICC(1982)でお引受することも可能です。 |
(2)戦争・ストライキ危険に関する基本条件
戦争・ストライキ危険はそれぞれ、協会戦争約款・協会ストライキ約款で補償されます。協会戦争約款、および協会ストライキ約款で補償する主な危険は以下の通りです。
・協会戦争約款
戦争、内乱、革命、謀反、反乱もしくはこれらから生じる国内闘争、加えてこれらの状態における捕獲・拿捕(だほ)や、遺棄された機雷・魚雷
・協会ストライキ約款
ストライキ、職場閉鎖、労働争議、騒擾(じょう)もしくは暴動
保険金をお支払いできない主な損害
- [1] 故意・違法行為による損害
- [2] 荷造り・梱包の不完全・コンテナ内への積付不良による損害
- [3] 貨物固有の瑕疵(かし)または性質による損害(自然の消耗、通常の減少、発汗、蒸れ、腐敗、変質、錆等)
- [4] 航海、運送の遅延に起因する損害
- [5] 間接費用(慰謝料、違約金、廃棄費用等)
- [6] 貨物が陸上にある間の戦争危険による損害
- [7] 原子力・放射能汚染危険による損害
- [8] 化学・生物・生物化学・電磁気等の兵器による損害
- [9] 通常の輸送過程ではない保管中などのテロ危険による損害
- [10] 船舶の所有者、管理者、用船者または運行者の支払不能または金銭債務不履行による滅失、損傷または費用(ただし、被保険者がそのような支払不能または金銭債務不履行が、航海の通常の遂行を妨げることになり得ることを当然知っているべきである場合に限ります。)
- [11] 被保険者が事業者(個人事業主を含む)である場合に、直接であると間接であるとを問わず、サイバー攻撃によって生じた損害
承認番号:B23-902592・承認年月:2024年12月・引受保険会社:三井住友海上火災保険株式会社